消滅時効を利用できるのは、「借金」だけではないということをご存知でしょうか。
今回の記事は、会社経営をされている方向けになりますが、実は、従業員に払うべき「賃金」にも消滅時効があるのです。
従業員の方は、このようなリスクもあるということが分かりますので、参考にしてみてくださいね。
法律上「賃金」とされているものは、法律上では、
基本給や残業代などの「一般的な賃金」
退職時にもらえるいわゆる退職金である「退職手当」
の2種類に分けることができます。
それぞれの消滅時効は、以下の通り。
(一般的な)賃金:2年間
退職金:5年間
これまでご紹介してきた時効と比べると、賃金は2年間ととても短い期間であることがわかります。
なお、この2年間というものですが、事情によっては3年と解釈されることもあります。
具体的には、「賃金を支払ってください」と従業員から請求があったにもかかわらず、経営者側が応じなかったというケースなどです。
このようなケースでは、2年が経過していても「賃金」の請求としてではなく、損害賠償の請求として裁判で認められることもあります。
では、この消滅時効のスタート地点となるのはいつなのでしょうか?
そもそも基本ルールとしては、今回のケースに限りませんが、「請求できるとき」と定められています。
では、賃金を「請求できるとき」とはいつになるでしょうか?
一般的な賃金(給料・残業代)で考えてみましょう。
この答えは「給料日」です。
たとえば、従業員の給料日が毎月30日となっている場合は、その日から消滅時効がスタートするのです。
ちなみに、残業代は通常、毎月の給料と一緒に支払われるものですよね。
ですから、この場合も上記では30日からスタートするということです。
さて、おさらいになりますが、「時効制度」を利用して、従業員に賃金を支払わずに済ませるための3つの条件を簡単に確認しましょう。
これまでも出てきているので、今回は要約してお伝えします。
1.時効までの期限(今回のケースでは2年または5年)が経過していること
2.従業員から訴えられたりしていないこと
3.従業員に対して「時効制度を利用するため、賃金は支払えない」という旨を伝えること
この3つが揃っていて初めて、経営者の方は賃金を支払わずに済みます。
また、未払いに悩んでいる従業員の方は、これらの条件がすべて成立しないように気をつけましょう。